朝ドラ「らんまん」での万太郎と徳永教授のやりとりが話題です。
万太郎が大学を去る際、徳永教授が「ある万葉集の句」を詠みました。
この万葉集の句は一体どんな意味があるのでしょうか?
詳しい内容や作者についてまとめました。
【らんまん】徳永教授が詠んだ万葉集の句の全文と意味は?
朝ドラ「らんまん」の第122話。
ついに、万太郎は辞意を徳永教授に伝えました。
その時に徳永教授が詠んだのは、「万葉集」の”ある歌”。
実は、「万葉集」が「らんまん」に登場したのは今回が初めてではありません。
大学に通い始めた万太郎と徳永助教授が心を通わすきっかけとなったのが「万葉集」でしたね。
当時のやりとりは、こちらの記事でご紹介しています。
万葉集の冬の代表歌
万太郎が徳永教授の部屋を去ろうとしたところ・・・
徳永教授が、
この雪の
消え残る時に
いざ行かな
と万葉集の上の句を詠みます。
そして、万太郎は、
山橘の
実の照るも見む
と続けます。
この句は、「万葉集」19巻の4226番の歌。
この雪の
消え残る時に いざ行かな
山橘の 実の照るも見む
(万葉集:巻19・4226番)
これは12月の冬の時期に読まれたもので、万葉集の中でも有名な一句です。
現代語に訳した意味
一体、この歌にはどんな意味があるのでしょうか?
この句を現代語に訳すると、
この雪が
消えてしまわないうちに
さあ出かけよう。
ヤブコウジの実が
雪に照り輝くさまも見よう。
という意味になります。
登場する植物はヤブコウジ
歌の登場する「山橘」は、冬に小さな赤い実をつける「ヤブコウジ」です。
●▲_
— 石木花|sekibokka (@sekibokka) January 10, 2023
しんしんと降り積もる雪。
photo:ヤブコウジ pic.twitter.com/3xKspfhpie
お正月飾りで見かける「十両」の別名。
縁起物としても使われていますね。
赤い実をつけるのは、10月〜2月の間です。
背が20cmほどの低い木のため、雪国では雪に埋もれてしまいます。
この歌が詠まれたのは、北陸・富山の冬です。
雪が降り続いた後、冬の晴れ間があり、雪が溶け出したのでしょう。
この歌を詠んだ歌人は、
- 白い雪と赤い実のコントラストが美しい
- 雪が溶ける時は太陽の光でキラキラ輝く
ということを知っていたのでしょうね。
だからこそ、
雪が消えないうちに
その光景が見たいから行こうよ!
と周りの人を誘っている。
そんなヤブコウジの実際の動画がこちらです。
花言葉は「明日への幸福」
「ヤブコウジ」の花言葉は、
明日への幸福
です。
ヤブコウジは、正月の縁起物でもあります。
新たな道を踏み出す万太郎への、徳永教授なりの花向けの歌だったのかもしれませんよね。
赤い実=万太郎?
近くの山より
— シラネアオイ (@sirane_aoi) January 25, 2023
雪の中のヤブコウジ pic.twitter.com/GJHKMTdX3H
「いざ行かな」という言葉からは、歌人の気持ちの強さが感じられます。
万太郎の「好奇心の旺盛さ」「強い意志」と重ねた部分もあるかもしれません。
さらに、徳永教授は、
雪の中でも存在感を放つ赤い実=万太郎
と見立てた可能性もあります。
学歴のない万太郎が活躍し、皆から愛されることに嫉妬心が無いはずがありません。
ただ、田邊教授と同じく、本当は万太郎が唯一無二の存在だと認めていたのでしょう。
そして、初めて二人が話すきっかけとなった万葉集を贈ることで、「進む道は違っても、植物を愛すという原点は同じだ」という気持ちを込めたのかもしれません。
【らんまん】徳永教授が詠んだ万葉集の句の作者は誰?
らんまんで徳永教授が詠んだ万葉集の句。
この句の作者は、
大伴家持(おおとものやかもち)
です!
大伴家持は、奈良時代の貴族・歌人です。
家持の父親は、あの「令和」の由来の歌を詠んだと言われる「大伴旅人(おおとものたびと)」。
家持は若い頃、県知事のような役職を与えられ、越中(富山県)に赴任しました。
都会育ちだった家持は、豊かな自然の美しさに魅了されたんだとか!
赴任中の数年の間に、家持は感性を刺激され、たくさんの歌を詠み残したといわれています。
そして、万太郎のモデルとなった牧野富太郎博士は「万葉集」がお好きだったんです!
万葉集には160種類以上の植物が詠まれています。
牧野博士は、
万葉集に登場する植物の図鑑を作りたい!
と構想していたんだとか。
万葉の人々と牧野博士。
「植物を愛する」という点で、心が通じる部分があったのでしょうね!
まとめ
今回は、朝ドラ「らんまん」で徳永教授が詠んだ万葉集の句について取り上げました。
「この雪の 消え残る時に いざ行かな 山橘の 実の照るも見む」は、雪が溶ける前の今しか見られない景色を見に出かけようという大伴家持の歌でした。
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